GMOワールド
こちらの記事は以前に、日経BP社のFoodScienceに掲載されていた記事になります。
こちらの記事は以前に、日経BP社のFoodScienceに掲載されていた記事になります。
先週後半、各紙カバーが集中した3つの記事に触れたい。しかし、その前に先週のGURTs(遺伝子利用制限技術)に関連して、カナダのGlobe And Mail紙に肯定的立場からの解説が掲載されたので、リンクだけ紹介しておく。興味のある方は一読されたい。
参照記事1
TITLE: Monarch Butterfly Population Down 75 Percent
SOURCE: AP by Mark Stevenson
DATE: Feb. 17, 2005
君主蝶(Monarch butterfly)、別名オオカバマダラと言えば、GMOワールドでは特別な意味を持つヒロインである。英国Nature誌99年5月20日号に掲載された米国コーネ ル大学ローシー教授らの、Btコーンの花粉で君主蝶の幼虫が大量死したとの論文に端を発した大論争をまったく知らぬ人 はおそらくいないだろう。
米国やカナダへ渡りをする君主蝶の生息数が、越冬地メキシコにおいて04年に75%以下に減ったとメキシコ政府環境局が発表した。君主蝶減少の主因は、渡り先の米国やカナダの機械産業的農業、除草剤多用やGM作物が、繁殖とえさ場を奪ったからだと報告書は主張する。
ともすればGM批判の政治的ゲームの道具にされかねないトピックであり、「メキシコの積極行動主義者と研究者たちからは・・・」と続いた時には、筆者も当然それを予想した。ところが、である。かれらの批判の矛先は、なんと自国メキシコの政府に向かったのだ。君主蝶減少の原因は、違法の森林伐採とそれを看過してきた政府にあり、他国に責任を転嫁すべきではない、という主張だ。
なお、メキシコでは、カルタヘナ議定書を担保する国内法に相当し、GM農作物を規定するフレームワークとなる新法案に、Fox大統領が署名するだろうとの2月18日付報道も、目を引いた。
参照記事2
TITLE: Mexico’s president to sign new regulations on genetically modified crops, food
SOURCE: AP by Morgan Lee
DATE: Feb. 18, 2005
GM食品表示規則などEUタイプの厳しい条件も付与される模様だが、ともかく禁止されていたGM農作物の国内栽培がついに政府から認められることになり、推進派農家からは歓迎の声が上がっている。
参照記事3
TITLE: UN Agency Accused of Distributing GM Foods
SOURCE: IPS, by José Eduardo Mora
DATE: Feb. 17, 2005
次は、国連WFP(World Food Program:世界食糧計画)が中米諸国へ送った援助食糧のトウモロコシを、04年11月にサンプリングして検査したらGMトウモロコシが入っており(これは当たり前)、グアテマラ向け物資にはStarLinkも含まれていた(それは事件かも)と、FoE(Friends of the Earth:地球の友)などの環境保護グループが発表した。
環境保護グループの発表は2月16日だが、リンクはWFP側の反論も載せた翌17日のもの。我が国の農水省が実施している混入検査でも、最近までStarLinkの微量混入は認められており、グアテマラの場合にもないと言い切れないだろう。
00年、アレルゲンとなる可能性を否定しえなかった飼料用のStarLinkが、米国でフードチェーンに混入し、輸出先の日本も含め食品回収の大騒動に発展した。GMOワールド史上最大・最悪の事件であり、StarLinkは最高のヒール(悪役)という汚名を着せられている。WFP関連ではアフリカへの波及も懸念され、今後の成り行きが注目される。
参照記事4
TITLE: Monsanto to Acquire Cotton-Seed Company
SOURCE: AP by Jim Suhr
DATE: Feb. 17, 2005
トリは、先月14億ドルで果実・野菜種子全米最大手Seminis社を買収すると公表した米国Monsanto社。今度は3億ドルで種子会社Emergent Genetic社の買収を2月17日に発表した。Emergent Genetic社は、全米第3位のワタ種子メーカーで、12%のシェアを持つ。
農業バイオに特化し、スイスSyngenta社と鎬(しのぎ)を削るMonsanto社は、最近「種子を制するものは世界を制す」という文法に極めて忠実なお買い物を続けている。今回の買収は、ワタ種子部門で複数害虫抵抗性のBollgard IIにさらに除草剤耐性をスタッキングした新品種の06年からの売り込みに向けた布陣と推測される。(GMOウオッチャー 宗谷 敏)