GMOワールド
こちらの記事は以前に、日経BP社のFoodScienceに掲載されていた記事になります。
こちらの記事は以前に、日経BP社のFoodScienceに掲載されていた記事になります。
クリスマスシーズンの先週、欧米のニュースルームは閑散としていた。年の終わりに堅苦しいニュースもどうかと思っていたら、息抜きに格好な記事をクリスマスイブの米国で見つけた。しばし拙訳にお付き合い頂きたい。ほろ苦い笑いと諧謔(かいぎゃく)に満ちた内容と、考えさせられるオチはなかなか筆者好みである。
参照記事1
TITLE: Santa finds it hard to be jolly in a modern world
SOURCE: Brownfield America’s Ag News Source, by Gary Truitt
DATE: Dec. 24, 2004
政府の規制、社会活動家と政治上の思惑が、北極に住むサンタクロースの年に一度の旅を妨げる。政治的、環境上の理由から、そして人道主義に固執する人々から受け容れられないクリスマスプレゼントの長いリストがある。
まず、サンタは移動にトナカイを使えない。西ナイルウィルス感染症、CWD(鹿慢性消耗性疾患)、BSE(牛海綿状脳症)などの状況下、USDA・APHIS(農務省動植物衛生検査局)は、州間や国境を越えるトナカイの移動を許さないだろう。北極から来たサンタは、米国・カナダ国境でトナカイの入国を拒否されるかもしれない。それどころか旅立つ前に、ELF(地球開放前線)の人々が、北極を襲撃してトナカイたちを野生に解放してしまうかもしれない。
夜道を照らすのに便利な赤い鼻のトナカイであるルドルフは、サンタがそれを使用することに対してサンタに技術料を請求することもありそうな話だ。サンタが抱える輸送問題はこれだけじゃない。EPA(環境保護局)は、環境破壊を理由に橇(そり)を禁止する。困ったサンタが大型SUV(スポーツ・ユーティリティ・ヴィークル)を利用しようとしたなら、メディアからの大批判を浴びることは想像に難くない。
サンタの有名なオモチャ工場で、一年中働いている幸せな妖精たちのイメージも今やジョークでしかない。妖精たちは労働組合に加入させられ、有給休暇、生理休暇、401Ks(確定拠出年金)、労働者休業補償保険、苦情申立て手続き、セクハラポリシーなどを与えられているかもしれない。
もしサンタが経費節減のために、工場を北極からメキシコに移転しようとしたなら、ストライキやサボタージュに見舞われるだろう。もしサンタが人件費節減のために、工場を中国に移転させるなら、米国政府は彼の大部分のプレゼントに輸入関税を課すだろう。
少年少女からサンタに宛てた手紙の多くが、炭素菌テロ防止のために郵便局で突っつき回されたり紛失したりするから、サンタのマスターリストは不完全なものになってしまうだろう。ショッピングモールで、サンタの膝に上がり自分たちの願いをささやいた子供たちは、政府の新しいプライバシー保護政策に抵触しないようサンタがそれを復唱して確認できなかったために、クリスマスの朝失望を味わうだろう。
年老いたサンタは、現代の子供たちへの贈り物を選ぶのにもまごつくに違いない。狙ったり撃ったりするオモチャはあまりに暴力的すぎるとされ、それどころかイラク戦争を支持する声明とみなされてしまうだろう。キャンデーなど甘いものは歯に良くない。お伽噺の本は因習的価値観を助長するから受け容れられない。そして、ビデオゲームは子供たちの知力を低下させる。人形は性的差別であり、宗教的なものは全部ダメ、野球やサッカーのボールは怪我の原因になるかもしれないし、スポーツが不得手な子供たちに対しては差別的だ。
いまや成人向け贈り物でさえ見つけにくい。毛皮・皮革類は一切御法度。タバコやアルコールも受け容れられない。祭日を祝う食べもののほとんどとて例外ではない。クッキー、フルーツケーキ、エッグノックは肥満の原因と目され、サンタは告訴されかねない。
これらの制約をかいくぐって適正な贈り物を運びえたとして、サンタはそれをどこに置くのだろう?クリスマスツリーは、非キリスト教徒にとって気持ちの悪いキリスト教の宗教的シンボルとしてますます払いのけられている。
それどころかサンタ自身が、現代の我々の世界に存在することさえ困難かもしれない。毛皮を身につけているからと、PETA(動物を倫理的に扱うことを求める人々)はサンタを追いまわすだろう。彼のパイプが間接喫煙被害を広めたとして、公衆衛生局がサンタを追求するだろう。灰や煤(すす)だらけの煙突に入るからと、OSHA(職場の安全と衛生に関する法令)がサンタに人工呼吸器の装着を要求するだろう。そして、ぶよぶよの震える太鼓腹に対しては、FDA(食品医薬品局)がサンタの食生活に一言もの申すだろう。
サンタクロースは、今まで何世紀にもわたり民話の英雄として名誉と崇拝を与えられてきた。しかし、今やますます彼は唯物論、過剰消費と人種差別のシンボルとして描かれる。私の子供時代、クリスマスイブの訪問者のためにいつも熱いココアとクッキーを戸外に用意したものだ。今日、サンタを待つものはおそらくスキムミルクだろう。そして、もしクッキーに遺伝子組み換えの成分が含まれるなら、それは表示をされなければならないだろう。
サンタクロースの伝統を政策より重要だと人々が考えていた時代・・・儀式が権利と規則と同じぐらいに重要であった時代・・・クリスマスシーズンがパーティーとプレゼントの代わりに喜びと愛であった時代に感謝しよう。今週、失われたそして罪深いこの世界を救う神の御子から贈り物、神からの本当のメッセージを、我々の近代的な世界の騒音でかき消させるな。メリークリスマス!(抄訳終わり)
なお、原文を読まれる方、冒頭の“Twas the night before Christmas: A Visit from St. Nicholas”とClement Clark Mooreは、有名な小児向けクリスマス絵本とその作者である。
来るべき年が、皆様とサンタクロースにとってより良い年でありますように。(GMOウオッチャー 宗谷 敏)