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多幸之介が斬る食の問題

健康食品の安全性は見方を変えなければできない

長村 洋一

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 第3回「健康食品」の安全性確保に関する検討会が去る9月12日に開催され、我々が主催している健康食品管理士認定協会とNPO日本食品安全協会の意見書がヒアリングの対象としてヒアリングを受けた。この検討会では製品自体の規格などに関連したGMPを含めての安全性の意見書に関する検討は既に第2回目に行われている。私はこうした提案を踏まえてヒアリングを受けたことから見えてきたいわゆる「健康食品」の安全性確保に関する大きな1つの考え方を示してみたい。

 いわゆる「健康食品」は販売されるときは食品の範疇で扱われることが多いために、(1)無責任な広告によって販売される(2)安全性の確認されていないものが商品として扱われる(3)医薬品、未承認医薬品が混入したものが食品として販売される(4)医薬品と平行して用いられ相互作用が発生する……といったような医薬品では到底考えられないような奇妙な、そして危険な現象が発生している。

 こうした健康食品の問題を論議するときその対象としての「健康食品」の明確な法的定義がないことが非常に大きな障害となっている。今回のヒアリング対象となった代表者の何人かが強くこの点を指摘していた。しかし、現実には「健康食品」という言葉を聞いた人はそれぞれのイメージの中で健康食品をとらえている。

 そして、前述のようなことが具体的な事件となった時には多くは薬事法、景品表示法、食品衛生法、JAS法のいずれかかまたは複数が適用され処罰されている。しかし、こうした時の扱いは「健康食品」が医薬品を装ったように扱われていることに重点を置かれて大きく問題視されていることが多い。すなわち、健康食品の違反はどちらかというと医薬品的感覚でどのように違反しているか、また医薬品として見た場合何が問題かという観点で多くの人がとらえている。

 先日のヒアリングでも「医薬品のサブカテゴリー」として健康食品を扱えば良いという意見が出されていた。そして、「健康食品」が法的に処罰されるケースが医薬品的観点からなされている現状からみると「健康食品」を医薬品の一種として見なしたら良い、という言い方には納得しやすいものがある。しかし、ここが大きな問題点の分かれ目である。医薬品というのは法的に認められたものであるが、今我々が問題としているのは医薬品まがいで問題をおこしている食品をどう安全に扱うかである。

 厚生労働省の検討会でも「健康食品」の定義に頭を悩ませられてとりあえず出された「いわゆる健康食品」という言葉が独り歩きをしている。しかし社会を騒がす問題は医薬品的な効能を標榜した商品が食品の範疇で販売がなされようとしているからであるから、そこには医薬品としてではなく食品として規制をかける新しい法的整備が最終的には必要である。しかし、医薬品サイドから追っかけた場合、イタチごっこのようにいつまでたっても同じような商品で同じような違反が繰り返されるに違いない。現実に、事件までになった「いわゆる健康食品」が引き起こした問題のほとんどが食品として扱われた商品である。それを医薬品としてのサイドから強く取り締まろうとすれば逆に食品に対して妙な規制が発生する可能性も否定できない。

 医薬品的な規制対象として健康食品が考えられるのなら、その取り扱いに対しては「薬剤師」にその職責を負わせればよい。しかし、現実には食品として問題を発生させているのであるから食品のサイドで監視役が必要である。ところが、食品サイドから食品を監視する役目を担っている法的な位置づけのある資格は幾つか存在するが、もっぱら食中毒を防ぐという観点に重点が置かれ現実に「いわゆる健康食品」の問題に手が回らないのが現状である。

 ところが、2002年に厚生労働省から出された「保健機能食品等のアドバイザリースタッフ」のガイドラインには次のようなことが指摘されている。
1)保健機能食品等の有用性、安全性を考慮した適正な使用法や摂取方法
2)健康食品と医薬品との相違についての正しい知識
3)保健機能食品等と医薬品および保健機能食品同士の相互作用についての正しい知識
4)栄養強調表示と健康強調表示に関する正しい知識
5)保健機能食品等の有用性、安全性に関する科学的根拠を理解するための基礎知識
6)食品および食品添加物の安全性や衛生管理等に関連する知識
7)健康状態および栄養状態に応じた食品の適切な利用のための健康・栄養に関する知識
8)関連法規(食品衛生法、健康増進法、薬事法、景品表示法等)の内容
9)消費者の視点に立った情報提供と適切な助言のあり方および消費者保護についての考え方
10)保健機能食品等の市場に関する知識や海外の情報等

 このガイドラインの保健機能食品等の“等”の解釈をしっかりすれば、問題となっている健康食品全般を包含してしまうことになる。そして、第6項に食品添加物や残留農薬等といった文言を加えれば、このガイドラインによって養成されたスタッフはまさに食の安全・安心を監視するための重要な人材である。食情報の混乱している今の社会でまさに要求されている人材でもある。我々は、今回のヒアリング対象となった意見書でこのアドバイザリースタッフの公的な位置づけを提言した。

 こうして、いわゆる健康食品も含めて食の安全・安心を科学的に確立して行こうとするとき、食品全般といわゆる健康食品までを含めた新しい概念による理論体系の中で論じられる食に関する学問分野の必要性を痛感している。(千葉科学大学危機管理学部教授 長村洋一)