多幸之介が斬る食の問題
こちらの記事は以前に、日経BP社のFoodScienceに掲載されていた記事になります。
こちらの記事は以前に、日経BP社のFoodScienceに掲載されていた記事になります。
先日私が主催する健康食品管理士認定協会に日本健康食品規格基準協会から米国食品医薬品局(FDA)が6月22日に、ダイエタリーサプリメントのcGMP最終規則を公表、官報(Federal Register)に収載されたFDA Newsについて連絡があった。収載資料は815ページに上り、過去にFDAが受け取ったパブリックコメントに対する見解も掲載されている。そして、従業員数500名以上の企業は2008年6月までに、500人以下の企業は09年6月までに、20人以下の企業は10年6月までに本GMPに準拠するように求めている。
これで、米国、韓国、台湾、中国なども含めてヨーロッパを除く日本に大きく関係している主な国々は、いわゆる健康食品に対するGMPを確実に整備した事になる。日本はまだ05年にそのガイドラインが出され、民間レベルでの2団体による認証が行われているのみである。その認証にも非常に大きな差があって、米国が2国間の整合性を求めて来たとき、現状ではとても対応できないと考えられる。
FDAは、このGMPの規制の施行に関する報告に関連させて、サプリメントのラベルに記載されている原材料が、間違いなく製品に使用されていることを製造販売企業が証明するよう求める新たな暫定規則案(http://www.fda.gov/OHRMS/DOCKETS/98fr/cf0441.pdf)を、90日間のパブリックコメント期間を設けて公表した。
日本の健康食品の現状は、特定保健用食品(トクホ)と栄養機能食品から構成されている保健機能食品は、それなりに整備されている。しかし、いわゆる欧米でいうところのサプリメントまたはハーブに該当している通常の食品の形態から著しくその形状が異なる錠剤やカプセル状になった健康食品は、日本ではほとんど一般食品として販売されている。そうした物に対する法的整備が不十分なためである。そのため健康食品で発生している問題のほとんどは、こうした錠剤やカプセル状になって販売されている健康食品によっている。
ところで、私はドイツへ招かれて講義やセミナーのため1カ月ほどこちらで生活をすることになり、数日前からドイツに滞在している。面白いことに昔の私の友人のKolb教授はここドイツで、一昨年糖尿病研究所を定年退官し、現在ある健康食品の会社の顧問をしている。そして、私が今健康食品関係の仕事もしていることに大変亜興味を示し、ドイツと日本の健康食品の現状と問題点を話し合った。
そこで、Kolb教授は彼がコンサルタントとして開発したある健康食品を示して、こんなものを日本に輸出するとしたらという話題になった。その商品を見て驚いたのは、明確に「糖尿病の人のために」ということが記載してあることであった。日本では医薬品以外でこのような記載をすれば、直ちに薬事法違反に問われる。しかし、ドイツではある法的規制の中でこうした健康食品の存在が許されている。
彼とは日本の健康食品のいわゆるヘルスクレームのあり方を議論したが、私は日本の現状があまりにも遅れていることに、改めて気付かされた。彼の開発したものには医薬品的な特殊な作用を有する物質は特に入っていない。しかし、それらの成分の存在は、理論的にも、実験的にも血糖低下作用が認められる。それらに安全なものであるとの保証をしっかりし、用法用量を明確に知らせれば、糖尿病患者やその予備軍の人達にそれなりに効果を発揮することは明らかである。
このKolb教授の健康食品は日本でもそれなりの臨床データと安全性のデータを付ければ多分、トクホとしては認められると思われる。しかし、もし認められたとしても記載できるのは「血糖の気になる方へ」というよく分からない表示でしかない。そしてどのように用いるかも「1日に3粒位を目安にお取り下さい」である。
欧米に伍していくことのできる日本の健康食品産業を育てるためにも、健康食品に対する一刻も早い法的整備をはるかドイツから望みながら、昔の仲間とワインやビールを楽しませていただいている。(千葉科学大学危機管理学部教授 長村洋一)