GMOワールド
こちらの記事は以前に、日経BP社のFoodScienceに掲載されていた記事になります。
こちらの記事は以前に、日経BP社のFoodScienceに掲載されていた記事になります。
最近、毎日新聞(ちょっと力作?)と朝日新聞(こっちはお茶濁し!)は、相次いで遺伝子組み換え作物・食品に関する連載記事を掲げた。当然、これらを目にされたFoodScienceの読者の方も多いことだろう。それらの記事と海外紙に掲載された以下のコメンタリーとを先ず読み比べて頂きたい。翻訳では、具体的国名を「我が国」などに意図的に置き換えてある。
「賛否両論とも良い意見があるので、遺伝子組み換え(GM)農作物を(国内)栽培することは議論に値します。しかしながら、今日、遺伝子組み換え作物がますます多くの地域で、広い面積に栽培される状況が世界的な傾向になりました。
我が国は、バイオテクノロジーを発展させた先進科学に高度に依存しており、かつWTO のフレームワークの下に自由貿易に携わっています。そのことから、何年間もGMトウモロコシとダイズを輸入してきており、我が国国民のほとんどが長期にわたってこれらの製品を摂取してきました。このことは、我々がこの問題を無視できないことを意味します。それに、もし理性的に論じることができるなら、すべての関係者にとってそれは良いことでしょう。
どのような製品の商業化も、国内経済への有益性とともに消費者と環境への安全性について、政府の効果的な管理とモニタリングを必要とします。多くの医薬品や工業製品の場合と同じように、遺伝子組み換え作物にも、否定的な結果を避けるように政府の管理が要求されます。
我が国の極めて高い農業生産コストは、それらのコスト軽減のためGM技術を使う必要性に直面します。そのことは、病気や害虫に抵抗するGM作物が、農民の殺虫剤コストを半減し、30パーセントかそれ以上発達した農作物によって反収を増やせたという他の国々が示しています。危険な殺虫剤の必要性を減じることにより、遺伝子組み換え作物の全体的な経済的利益は、それらの開発コストよりずっと高いでしょう。それが、米国農民の93パーセントが喜んで遺伝子組み換え作物を栽培する理由です。
長らく存続する政策的制約の結果として、病気や害虫に抵抗し、肥料の使用を減らしながら環境ストレスに耐性がある食料と家畜飼料のための遺伝子組み換え作物を、積極的に研究開発することに、我が国は失敗しました。
我が国の農民が、非GMのトウモロコシとダイズを栽培しています。それは大量の殺虫剤と肥料を必要とします。生産コストは上述の通り高額であり、輸入された同じGM農産物より国産農産物をずっと高価にしています。結果として、我が国はかなりの範囲を輸入品に頼ります。
遺伝子工学が同じく医学や産業目的の製品を作り出せます。それらは広大な栽培面積を必要とせず、隔離した地域で成育し、高い付加価値を創出できます。これにより、我が国に持続可能な農業管理のために適所を作ることができるでしょう。
ヒトと家畜の栄養ばかりか環境にも有益な酵素フィターゼを産み出すたった1つのGMイネ品種の市場価格が、我が国全体のコメ輸出価格に近いことを、我が国の農業エコノミストによる評価が示します。この1つの製品のために適所があります。そして直ちに開発できる他の製品がいくつかあります。
水稲のように自家授粉する遺伝子組み換え作物のためには、2mの生け垣あるいは30mから40mの空き地が効果的に交雑を防ぐことを、国内と海外の研究が示しています。このことが、薬品や有毒物質を生産している工場の管理以上には管理が難しくはないことを意味します。
遺伝子組み換え作物に使われた遺伝子の源について、公衆の疑念があります。ほとんどの組み換えられた遺伝子が、今まですでに農業で使われた作物もしくは微生物に由来します。例えば、害虫に対する抵抗力が強い細菌であるBt遺伝子は、有機農業で広範に使われてきました。同じく、水稲のための塩害、干ばつと寒さに対する抵抗力が強い遺伝子は、実際にコメそのもの由来です。このような遺伝子と製品は安全であり、ヒトの消化管です速く分解されます。なぜなら科学者たちの遺伝子組み換え作物の開発の焦点は、ヒトの健康と環境を維持することなのですから。
農産物輸出が、1991年に輸出総額の12.8パーセントを占めていましたが、その数字は去年1.6パーセントに下落しました。12.8パーセントのうち、農作物は30パーセントだけです。従って、農産物の市場価格がますます取るに足りないものになっています。 農業技術の開発は我が国において低迷し続けており、そして国際競争力を欠きます。一方において、殺虫剤の過剰な使用が、人々の健康と環境をおののかします。
米国は、我が国の農産物の最大輸出元であり、今や我が国の農産物輸入の3分の1を米国製品が占めています。しかしながら、その米国でさえ遺伝子組み換え作物を広大なスケールで栽培し始めました。(我が国の)厚生省が、GMイネとパパイヤを検査対象品目のリストに加えたことから、我々はもっと多くのGM製品が輸入される可能性が高いことを知っています。
我が国の農業が、高い労働コストのような困難に直面しており、そして競争力のない伝統的農産物の市場価格は同じく低迷しています。国内の研究とGM技術の開発を不合理に制限しているうちに、もし我々が遺伝子組み換え作物を大量に輸入するなら我が国の未来はどこにありますか? これらすべての問題は理性的な態度で議論されるべきではありませんか?」(記事翻訳終わり)
日本の2紙が、生活面の記者たちにより主に消費者目線でまとめられていたのに対し、このコメンタリーの筆者は農業バイオ工学全国科学技術プログラム事務局長を前職とする台湾中央研究院(アカデミー)会員という専門家であり、むしろ農業生産現場や農業経済に視点を置いている。
http://www.taipeitimes.com/News/editorials/archives/2009/11/19/2003458802
TITLE: Straight talk on GM crops crucial
SOURCE: Taipei Times, by Tuan-hua David Ho (賀端華)
DATE: Nov 19, 2009
このTaipei Times掲載のコメンタリーでは、「我が国」=台湾を日本と置き換えても、大筋は違和感なく読めてしまうのだが、The Japan Timesはじめ日本の一般紙には、こういう論調の専門家からの(投稿)記事はまだ現れない。
そうこうしているうちに、中国政府は上記記事中にもある中国Origin Agritech社の高フィターゼGMトウモロコシ(国内限定の飼料用)の商業栽培をあっさり承認(09年11月23日 付Reuters) してしまった。さらに中国農業省Biosafety 委員会が害虫抵抗性GMであるBtイネ にも安全性証明書を発行(09年11月27日 付Reuters)したとReutersがスッパ抜きで伝えており、このBtイネ商業栽培は2〜3年先と見られている。
ウーン、鼻白んだ後から空恐ろしくなってしまうほどに低レベルな戯言を、ブログなどに垂れ流し続ける農政閣僚関係者を頂く新政権は、前政権以上にGMがお嫌いらしいのだが、「我が国ニッポンの未来は、『もっと』!どこにありますか?」(GMOウオッチャー 宗谷 敏)