GMOワールド
こちらの記事は以前に、日経BP社のFoodScienceに掲載されていた記事になります。
こちらの記事は以前に、日経BP社のFoodScienceに掲載されていた記事になります。
米国オハイオ州クリーブランド在Case Western Reserve大学のGMスーパーマウスの話題で、先週末は持ちきりだった。このGMマウスは、疲労物質乳酸の発生を抑えて、毎分20mのスピードで5〜6km、最高6時間走り続けることが可能だという。これは国内一般紙もカバーしているし、FoodScienceの趣旨にもそぐわないのでパス。もっと地味だが、より実用性の高いGMレタスの話題を紹介しよう。
参照記事1
TITLE: Can Genetically Modified Lettuce Cure Diabetes?
SOURCE: Pittsburgh News
DATE: Nov. 2, 2007
米国Central Florida大学のHenry Daniel教授のチームがGMレタスにより、インスリン分泌ができなくなる1型糖尿病のマウスの経口投与治療実験に成功した。インスリンのためのヒト遺伝子を挿入されたレタスはインスリンを作り、このインスリンを糖尿病のマウスに8週間与えたところ自己免疫障害が治癒し、マウスは正常にインスリンを分泌するようになったというものだ。
Daniel教授はこのGMレタスには糖尿病予防効果はなく、より安価な治療に役立つのみだと言っているが、糖尿病に悩み、煩わしいインスリン注射のお世話になっている人は何百万人もいるから、教授には何千件もの問い合わせ電話やメールが殺到した。しかし、この研究結果はPlant Biotechnology誌に掲載されただけで、医学系ジャーナルには発表されていない。
それでは、医療関係者のうち糖尿病の専門医はこの事態をどう見ているのか? 記事中でコメントしているのは、米国ピッツバーグ小児病院で糖尿病研究を30年間続けてきたMassimo Trucco博士だ。Trucco博士は、Daniel教授の研究のいく分か、糖尿病患者に対する治療効果は信じられるものだと回答している。
しかし、Trucco博士や多くの医学者が疑問視するのは、Daniel教授が主張しているカプセルによる経口投与という方法である。どのような形のインスリンであっても、消化されてしまうため胃から血液へは移動できないのではないかという問題である。
これに対し、既に今年8月、フリーズドライしたGMタバコをマウスに経口投与する実験に成功しているDaniel教授は、植物細胞壁がインスリンを守り、無事に胃を通過して腸管にまで届くという理屈で説明している。インスリンは腸から吸収されるというのだ。医薬品としては、当然ながらこの確率・信頼性が先ず問われるところだろう。
タバコに続くレタスでの成功により、Daniel教授らは次にヒトへの治験を計画しており、結果が注目される。なお、Daniel教授は、米国科学振興協会(AAAS)からthe Advancement of Sciences Fellows for 2007に選ばれている。(GMOウオッチャー 宗谷 敏)