GMOワールド
こちらの記事は以前に、日経BP社のFoodScienceに掲載されていた記事になります。
こちらの記事は以前に、日経BP社のFoodScienceに掲載されていた記事になります。
「英国人は歩きながら考える。フランス人は考え終わると走り出す。スペイン人は走り終わってから考える」という各国民性に関する有名なジョークはなかなか的を射ており、GMOに対する3国の態度にも見事に当てはまりそうに思える。「考え終わったフランス人は、どう走り出したのか?」について、今週は観察する。
参照記事1
TITLE: Positive 2006 results and new regulatory framework improve 2007 prospects for biotech corn in France
SOURCE: USDA/FAS, GAIN report FR7013
DATE: March 30, 2007
最初に商品知識の確認から。米国Monsanto社のGMトウモロコシMon810系統はBtたんぱく質Cry1Abを含み、ヨーロピアンコーンボーラー(アワノメイガ)への耐性を有する。2004年9月にEU全域で栽培可能な種子カタログに17品種が登録され、現在では47品種が掲載されている。スペインとフランスではこれらに先立ち国内栽培が認可され、スペインでは既に広く栽培(06年は10万ヘクタール)されている。
フランスでは、06年にMon810が5200ヘクタール(トウモロコシ全栽培面積は180万ヘクタール)に商業栽培された。国内各地13カ所のMon810畑をモニターしたフランストウモロコシ生産者協会(AGPM)は、Mon810は茎への害虫の寄生が少ないため、Non-GMの在来品種に比べ、より高反収でありかつ衛生面の品質でも勝っていたと発表した。
Mon810の反収は在来種に対し平均9%高く、コーンボーラーの被害が激しかった地域では約12%高かった。衛生的な品質面では、カビ毒のマイコトキシンレベルでMon810の優位性が明らかになった。Mon810のマイコトキシンを発現するフモニシンの含有は、在来種の45%(フモニシンの低い地域)から58%(フモニシンの高い地域)に留まった。
これらの肯定的な結果を受けて、07年にはフランスにおけるGMトウモロコシの商業栽培面積は一気に3万から5万ヘクタールに拡大すると見られている。これを後押しする材料は他にもある。フランス政府が、GM農産物栽培のフレームワークを明確化した一連の動きだ。
参照記事2
TITLE: France adopts disputed EU laws on GMO crop growing
SOURCE: Reuters, by Sybille de La Hamaide
DATE: March 20, 2007
07年3月20日、フランスはEU指令2001/18を反映した規制法を官報告示した。この指令はGMOの野外試験と商業栽培を含む意図的放出に対する規制のフレームワークを規定しており、加盟各国はこれに沿ったいわゆる共存のための国内法整備が義務となる。
しかし、フランスはこれに対し不服従だったため、06年12月の欧州委員会からの再要請により欧州裁判所から罰金(04年7月の最初の判決時点から科料される)を言いわたされていた。これはたまらないということで、ようやく重い腰が上がったらしい。
合理主義のお国柄、そうと決まればやることは早い。フランス農業省は共存法官報告示に先立つ3月19日、13品種のGM作物(トウモロコシ12品種及びタバコ1品種)の野外試験栽培を承認(ジャガイモ1品種は拒否)した。
翌3月20日には商業栽培でも、共存のための緩衝地帯を50メートルと定め、農家が地区毎のGM圃場の数や面積を届け出る記録簿を整備することとした。当然、トレーサビリティを担保する目的である。このリストはインターネットに公開される予定だが、反対派によるGM圃場破壊活動を懸念するAGPMは、生産者の氏名や正確な所在地を明かさないよう要望している。
一方、その他の懸念材料としては、Mon810とは異なるBtたんぱく質Cry3Bb1を含みコーンルートワーム(根切り虫)に耐性を持つMon863に対する反対派からの告発が上げられる。Greenpeaceから資金提供を受けたフランスの研究者グループが、3月14日、MON863の安全性に疑義があると発表した。
参照記事3
TITLE: New Analysis of a Rat Feeding Study with a Genetically Modified Maize Reveals Signs of Hepatorenal Toxicity
SOURCE: Archives of Environmental Contamination and Toxicology
DATE: March 14, 2007
この研究では 、情報公開請求により入手したMonsanto社によるMon863の安全性審査申請書類を再検討した結果、ラット体重に有意差が認められ、尿検査の結果が隠蔽されており、これらから肝臓と腎臓に毒性が認められた可能性があるというもの(実際に飼養試験が行われた訳ではない)だ。
Mon863はとかくいわく付きの品種だが、Mon863の安全性を承認した欧州食品安全庁(EFSA)が、反対派からのこの告発をレビューすると言っており、その結果を待ちたい。(GMOウオッチャー 宗谷 敏)