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BoveニモマケズRoyalニモマケズ〜フランスのGM栽培農家

宗谷 敏

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 EU域内でGMトウモロコシが商業栽培されている国には、14万8200エーカーのスペインを筆頭にフランス、チェコ共和国、ポルトガルおよびドイツなどがある。フランスにおいてもっぱらメディアを賑わしているのは積極行動主義者によるGM圃場破壊行為だが、米国Wall Street Journal紙は、GMトウモロコシ栽培農家の主張と現実を併せて紹介している。

参照記事1
TITLE: French farmers, activists battle over genetically-altered corn
SOURCE: The Wall Street Journal, by John W. Miller
DATE: Oct 12, 2006

 「フランスの農家がより安価で効果的な害虫防除を求めて、EUで栽培が認可されている害虫抵抗性GMトウモロコシ栽培を増やしている。フランストウモロコシ栽培者協会(French corn-growers association)によれば、2006年の作付面積は、05年の10倍以上の1万2350エーカーに達する見込みである。

 それは、年間300億ドルの世界の種子産業からみればはした金だが、Monsanto社やDuPont社のような米国企業にとっては重要だ。EUの種子消費は世界の15%、60億ドルであり、GM種子はまだ1%以下にすぎないが、莫大な成長の可能性があるからだ。

 ボルドー近郊のトウモロコシ農家Claude Menara氏(52歳)は、米国農家からのGMトウモロコシが大量に輸入されるのを見て、昨年17エーカーのGMトウモロコシを栽培した。Monsanto社のGMトウモロコシは、Menara氏にエーカー当たり約38米ドルの殺虫剤コスト削減をもたらした。しかし、近隣農家の殆どはGMトウモロコシを使っていない。

 1988年にヨーロッパコーンボーラーがMenara氏の作物のほぼ半分をダメにした。Monsanto社のGM種子は、エーカー当たり普通の種子が38ドルなのに対し48ドルする。しかし、エーカー当たり24ドルから48ドルかかるコーンボーラー殺虫剤のスプレーコストを節約できる。

 Menara 氏は、現在彼が得ている年間22万5000ドルの農業補助金が、13年までに段階的に削減されるのに代わり、この利益が彼の農業継続を守るのに役立つと考えている。彼の1000エーカーの農場全体の利益は、1エーカー当たりおよそ250ドルである。しかし、Menara 氏は、GMトウモロコシを栽培したことで、トラブルに巻き込まれることになる。

 GM農産物は、長期摂取の食品安全性や不可逆的環境影響に関して依然論争があり、環境保護積極行動主義者や政治家からの攻撃を受ける。Greenpeaceは1500人のボランティアにより構成される「探偵」組織を持ち、農家の畑からサンプルを採取し(米国SDI社の)酵素抗体法キットでGM作物かどうかを調べて回っている。

 Greenpeaceは、7月にMenara 氏の氏名、住所と農場の正確な地図をウェブに公表した。Menara氏は地図をウェブサイトから消させるためGreenpeaceを告訴し勝ちを収めた。しかし、Greenpeaceは数日後、同氏の畑のトウモロコシを押し倒して十字を刻印した。

 9月2日には、昔McDonald’sレストランを破壊し44日間の禁固刑を受け、現在でもあちこちのGM圃場を破壊していることで有名なJose Bove 氏がやってきて、Menara 氏のトウモロコシ畑の30エーカーを破壊するように仲間に指示した。3人が逮捕され、評決次第では最高3カ月の禁固刑に服すことになる。
 Menara 氏は、このような妨害行為は彼にGM作物を栽培する決意をいっそう強くさせるだけだと言う。『今年は250エーカー植えたが、来年は500エーカー植えるだろう』。しかし、来年のフランス大統領選挙で社会党指名の最有力候補者であるSegolene Royal女史は、最近のスピーチでフランスにおけるGM農産物栽培禁止令を要求した。」(記事抄訳終わり)

 このWall Street Journal紙記事の紹介と解説が、10月25日のTruth About Trade & Technologyにも掲載されているので、併せてご覧下さい。推進派寄りなので、Menara 氏を真の「friend of the earth」だと激賞し、圃場破壊者を「二本足の害虫」呼ばわりしています。

参照記事2
TITLE: Golden Genes
SOURCE: Truth About Trade & Technology
DATE: Oct 25, 2006

 さて、GM推進派にとっては物騒な発言をしている大統領選有力指名候補のSegolene Royal女史であるが、討論会でヤジにマジギレしてしまったと10月25日の英国Telegraph紙が伝えている。

参照記事3
TITLE: Royal loses her cool after boos from party members
SOURCE: Telegraph, by David Rennie
DATE: Oct 28, 2006

 GM栽培禁止論のところを読むと、女史は「子宮内の胎児に重大な影響を与える」から栽培禁止だと主張している点でも、識者からの批判を浴びているらしい。もし、Independent紙をご愛読で、ロシアIrina Ermakova博士のデータを盲信しているのであれば、女史のフランス大統領就任は笑えぬ脅威である。(GMOウオッチャー 宗谷 敏)