GMOワールド
こちらの記事は以前に、日経BP社のFoodScienceに掲載されていた記事になります。
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2006年10月9〜13日、インドのニューデリーにおいて、第2回国際コメ会議the International Rice Congress(IRC)が開催された。第1回は02年9月に北京で開催されているが、今回の参加者はコメ栽培国90カ国余のうち40カ国約1200名に達し、うちインド以外からの参加者が約400名という大きなイベントになった。コメに関する広いスコープを扱う包括的な会議であるが、バイオ関連と貿易関係をチェックしてみよう。
開催初日にスピーチに立ったインドManmohan Singh首相は、自国のコメ生産量と生産性の停滞を懸念し、第二の緑の革命の必要性を強調する。一方、バイオ工学については、飢えた人々の要求を満たす可能性と、自然に影響を与えるかもしれないという倫理的な心配との間に研究者はバランスをとる必要がある、と極めて穏当な見解を示した。
同じく初日にthe International Rice Research Institute:IRRI の長官Robert S. Zeigler博士からは、2007-2015年の新戦略計画として、稲作農民とコメ消費者の貧困を減らすための食物安全管理、環境の持続可能性、健康と栄養、情報と知識へのアクセス及び世界のどこでも新しく改善されたイネ品種を開発する努力への支援という5つの焦点が紹介された。
翌10日のセッションにおいて、Zeigler博士はコメ需要が増加しており、現在は7%しか国際貿易に回らないが、中国やインドが大量に輸入し始めた場合、価格が上がりバングラデシュやアフリカのような貧しい国が入手不可能になるかもしれない。しかし、いくつかの国で起きていているGMコメの開発が、世界的規模の供給で重大な相違を作ることが可能だろうとGMにポジティブな意見を述べる。
これに対して、ニューデリーベースの穀物アナリストからは、GM作物にはヘルスリスクや環境への悪影響があるかもしれない。フィリピン、インドネシア、インドやベトナムの農家は、有機農業でコメの反収を増加させている、とお決まりの反論が出た。また、中国からは、すでに害虫抵抗性GMコメ品種が開発され完全に消費するのに安全だが、政府が商業栽培を許さないと報告された。
国際貿易関係では、Asia International Food Policy Research Institute:IFPRIのAshok Gulati理事らから、報告が行われた。収入が増加し、農地を削減させる圧力から将来アジアでは、コメがコムギやトウモロコシに対し劣った貿易産品になるが、その重要性はアフリカで増大するだろう。
先進国の補助金や保護政策が歪みを生じ、インド、タイ、ベトナムのような途上国やバングラデシュのような小さな先進国に影響を与える。これらを排除するためにWTOのテーブルに戻る必要がある。現在、試験栽培途上にあるGMコメは、商業化されれば食糧安全と証明にリンクされて、貿易関係者にとりコメ市場をより複雑なものにするリスクがある。
この会議におけるもう一つのハイライトは、10日のアジア農業大臣ラウンドテーブル会議だった。中国、インドネシア、ラオス、ネパール、パキスタン、フィリピン、スリランカ、ベトナム及びインドの9カ国の農相(代理含む)がこれに参加した。コメの研究開発を中心に5つのアジェンダと8点の合意事項を含む共同声明が発表された。
さて、LLRICE601事件で渦中のBayer CropScience社はといえば、来年から中国、バングラデシュとパキスタンなどアジア地域でのハイブリッド種子の販売を拡大すると述べ、USDAが調査中としてLLRICE601へのコメントは避けた。
これにおさまらないGreenpeece Internatonal は、LLRICE601はすでに9カ国で発見されており、中東で販売されているブランド米からも発見したなどと揺さぶりをかけたが、議場の反応は鈍かったようだ。
全体から感じられるのは、Bayer社の作戦通り、アジアではしばらく反収を増やすNon-GMハイブリッド種子への移行の時代が続くだろうという点だ。GMは、おそらく中国の商業化が鍵を握っているが、貿易上の一定のコンセンサスが得られるまで、商業栽培は難しそうである。イランは、ISAAAのGMコメ商業栽培を否定したと伝えらている(全否定なのか、栽培面積なのかは当該記事からは読みとれない)。
この国際会議関連のニュースは40本近く上がっている。その中に、おそらく参加はしているのだろうがわが瑞穂の国のJの字すら見つけられなかったし、国内報道も完全に無視である。一抹の淋しさを感じながら、栗ご飯に舌鼓を打つ今日この頃。(GMOウオッチャー 宗谷 敏)