GMOワールド
こちらの記事は以前に、日経BP社のFoodScienceに掲載されていた記事になります。
こちらの記事は以前に、日経BP社のFoodScienceに掲載されていた記事になります。
モントリオールのカルタヘナ議定書第2回締約国会議は、まだ整理された報道がなされていない。6月3日、EUでは食品安全性専門家会議が、GMトウモロコシ1507の承認に再び失敗した。一方、国内では名古屋港および苫小牧港で、相次いで飼料用トウモロコシへのBt10混入が発見され、気分の落ち着かない先週であった。
そんな中で、ロンドンの民間調査機関であるPanos社が発表したレポートが、目を引いた。内容は、途上国におけるGM農産物に対する意志決定を、誰がどのようにして行っているのか、影響力を持つのは誰か、メディアの関与はどうなのかというケーススタディである。取り上げられたのは、ブラジル、インド、ケニヤ、タイおよびザンビアの5カ国だ。
参照記事1
TITLE: The GM Debate – Who Decides?
SOURCE: Panos Report
DATE: May 28, 2005
このレポートのサワリの部分だけを抜粋したものが下記である。抄訳を添える。
参照記事2
TITLE: ’Who Decides? GM crops in the developing world’
SOURCE: checkbiotech.org
DATE: Jun. 3, 2005
「調査によれば、GM農産物に対する意志決定のフレームワークは、各国において相違を見せる。しかしながら、途上国政府がどのように意志決定を行うか、誰が意志決定者へのアクセスを持つかについて、いくつかの一般的な結論を導き出すことは可能だ。
(1)GM技術は、農業、貿易、科学と環境の省庁など政府機関によって規制される。法律を決定することにおいては、いつもではないが、たいていの場合議会が大きな役割を果たす。
(2)さまざまな市民グループが、政策策定のプロセスの異なった部分へのアクセスを持つ。科学者、国際的な寄贈者、バイオ工学産業と商業的農民の代理を務めるグループが農業、貿易と科学などの政府機関への良好なアクセスを持つ傾向がある。
(3)科学者は意志決定プロセスのほとんどの段階に関与し、すべての政策分野の決定者への良好なアクセスを持つ傾向がある。
(4)消費者団体やNGOは、しばしばより強力な農業、貿易と科学の省庁よりも、環境と公衆衛生の省庁や共鳴する議員たちへのアクセスに、より成功している。
正確でバランスがとれたメディアの報道がGM討論にとって非常に重大であることも、このケーススタディによって明らかになった。
(1)メディアの報道とGM討論の質は、政府の複数政党制、活発な市民社会と独立したメディアのより長い伝統を持つ国において高かった。
(2)分析(あるいは調査)を欠く報告、例えば大部分はニュース記事、が政府筋からの発表に基づいていた。
(3)多くの国において、外国のグループが明らかにメディアの報道に影響を与えている。バイオ工学産業は広報活動を実行し、そして反GMのNGOも同じくメディアを利用しようとする。
(4)農民の、特に小規模な農家の見解は、めったにメディアに反映されない。
世論形成に重要と思われるメディアカバレッジの問題を、5つの国別にもう少し詳しく述べているのが下記である。
参照記事3
TITLE: Developing World Media ’Lacks Critical Analysis of GM’
SOURCE: SciDev. Net
DATE: May 25, 2005
今や国連安保理入りを目指す先進国であるはずの我が国で、GMOに対して「正確でバランスがとれたメディアの報道」は、果たして達成されてきたのだろうか?(GMOウオッチャー 宗谷 敏)