GMOワールド
こちらの記事は以前に、日経BP社のFoodScienceに掲載されていた記事になります。
こちらの記事は以前に、日経BP社のFoodScienceに掲載されていた記事になります。
先週の米国内メディアは、こぞって3月2日に実施されたカリフォルニア州メンドシノ郡のMeasure H(遺伝子組み換えされた動・植物の生産に対する禁止令)への住民投票の結果を採り上げている。なお、この背景については1月16日付拙稿を参照いただきたい。
参照記事
TITLE: Biotech, Timber Fails in Calif. Counties
SOURCE: AP, by Paul Elias
DATE: Mar. 3, 2004
注目のローカル・ミニミニ・スーパーチューズディの結果は、1万4839票(56.51%)対1万1420票(43.49%)で、僅差の範囲ではあるがMeasure Hは成立した。米国内におけるこの種の挑戦で反GMグループが勝利を収めたのは初めてのことである。Measure Hの具体的内容は下記の記事中に詳しい。
参照記事
TITLE: Area growers wary after Mendocino measure passes
SOURCE: The Modesto Bee, by Richard T. Estrada
DATE: Mar. 6, 2004
例によって、この手の動きを封じるために組織されたバイオ工学企業群をバックとするコンソーシアムは、Measure H成立阻止に向けて宣伝費用など62万ドルあまりを注ぎ込んだが今回は成功しなかった。
個々のバイオ工学企業は本件に対するコメントを控えているようだが、今は何を言ってもメディアの興奮をあおるだけだから正しい判断だろう。彼らにとって頭が痛いのは、メンドシノ郡のキャンペーン本部に、米国内の200あまりの郡から「どうやって成功したのか?」という問い合わせが相次いだという報道である。
そしてカリフォルニア州内では、他の9つもの郡でメンドシノ郡と同様な動きが進行中であることだ。11月に住民投票が予定されているフンボルト郡やソノマ郡、ナパ郡、マリン郡などである。メンドシノ郡の結果に各地の反GMグループが勢いづくことは間違いない。今までシャットアウトされてきた草の根反GM運動は、ドミノ倒し的に勝利するのだろうか?
もちろん個々の投票結果は蓋を開けてみないと分からないが、一つ指摘しておきたいことがある。メンドシノ郡においてMeasure H運動の原動力となったのは、ワイン原料のブドウ有機農園を経営するグループであった。
実はメンドシノ郡ではこの有機農園の比率が20%を占め、ナパ郡の2.4%やソノマ郡の1%以下などに比べて特に高い(03.11.05 Metroactive)。つまりメンドシノ郡は、バイオ工学企業側にとって最初から極めて不利な地盤だったと言えるのである。
また他のメディアの推測では、バイオ工学企業側はサクラメント(カリフォルニア州の州都)やワシントンD.C.に働きかけ包括的な法案を作らせ、行政訴訟などを通じて個々の地方自治体の動きを無力化するのではないかともいう。局地戦で負けても、上のレベルでカードを切ってしまえばいいという発想である。
この争議はあくまで地元の有機農業を守ろうとすることから起きた摩擦である。広い国土の中で、GMOに慣れ親しみそのメリットを享受している中西部の農家は整然とGMOを植え続ける。そして、メンドシノ郡の人々もそれらの製品の販売や消費を禁止しようとは一切していないのである。(GMOウオッチャー 宗谷 敏)