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GMOワールド

「夢のカリフォルニア」は結構熱い?

宗谷 敏

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 遅ればせながらおめでとうございます。米国におけるBSE発見の関連報道が、垂れこめる暗雲のように食品関連ニュースを覆いつくした年末年始であった。GMO関連では際立って大きな動きはなかったが、米国のカリフォルニア州メンドシノ郡における反バイオ工学運動をめぐる記事がいくつか上がっていたので、これを取り上げてみたい。

 州都サクラメントの地方紙と、ニューヨークタイムズなどが広くカバー(04.01.10)したAP電を並べて張っておく。

参照記事
TITLE:Mendocino new biotech battlefield
SOURCE:Sacramento Bee, by Mike Lee
DATE: Jan. 3, 2004

参照記事
TITLE:Calif. County to Vote on Modified Plants
SOURCE:AP
DATE: Jan. 9, 2004

 カリフォルニア州北部に位置するメンドシノ郡は、今や米国内の反バイオ工学運動の中心となっている。それは、遺伝子組み換え植物や動物の生産を禁止する法案の住民投票権を要求する草の根運動と、これを阻止しようと遺伝子組み換え農産物のメリットを主張するカリフォルニア・プラント・ヘルス協会との争いである。

 カリフォルニア・プラント・ヘルス協会のバックには、モンサント、バイエル、ダウなどのバイオ工学メーカー群が控えている。彼らは昨02年、500万ドル以上をつぎ込んで、オレゴン州の遺伝子組み換え食品表示を目指した住民投票権獲得運動を潰した。

 ポウ食品バイオテクノロジー研究所(Pew Initiative on Food and Biotechnology)の調査によれば、01-02年に39の州がバイオ工学にかかわる158の法令を導入した。しかし、約30の州においてのそれらは遺伝子組み換え作物の圃場破壊を禁止する法令である。

 例えばメリーランドのように、遺伝子を組み換えた魚に5年時限の禁止令を課した州もある。しかし、いずれもメンドシノ郡のような全面的なものではなかった。地方政府は連邦政府より厳しい規則を定められるのかということと、交雑が起きた場合賠償責任を誰が取るのかという2つの問題が、ここでは提起されている。

 ところで、昨年10月大騒ぎの末シュワルツェネッガー知事を誕生させたカリフォルニア州は、州総生産約1兆3300億ドル、農産物生産約255億ドルを誇り、これらは共に全米第1位(00年、CASS:カリフォルニア州農業統計局)である。

 特に農業生産では第二位のテキサス州133億ドルをはるかに引き離している。全米生産量の80%以上を占める農産物が、アーモンド99%、クルミ99%、セロリ94%、ブドウ92%、アボカド89%、ブロッコリー88%、トマト85%、イチゴ82%など8品目もある。

 さらにカリフォルニア州では有機農業も盛んであり、有機農産物の一大供給地であることは、今回のことと無関係ではない。遺伝子組換え生産禁止キャンペーンの本部は、地ビールと有機食品を振る舞う醸造パブに置かれていることは象徴的である。

 また食品安全というより環境問題から起きた運動であることは、キャンペーンが遺伝子組換え加工食品のスーパーなどでの販売までは禁止する意志のないことからも明白である。

 ワインに多少興味がある方ならカリフォルニアワインの産地としてメンドシノの名前はお馴染みかもしれない。いち早くこのキャンペーンに呼応したのも、遺伝子組み換えブドウに危機感を抱いたワイン製造者だったという。

 このように、遺伝子組み換え作物が大規模に栽培されている中西部などとは異なり、やや特殊な背景を持つ土地柄ではあるが、全米の地方政府は固唾を飲んでこの行く末に注目している。

 ママス・アンド・パパスの往年のヒット曲「夢のカリフォルニア」は、「California dreamin’ on such a winter’s day(こんな寒い冬の日にはカリフォルニアを夢見る)」と繰り返し歌っていたが、ホントに結構熱いらしい・・・(GMOウオッチャー 宗谷 敏)