科学的根拠に基づく食情報を提供する消費者団体

執筆者

道畑 美希

京都大学農学部修士課程修了後、外食企業を経てフードコーディネーターに。東洋大学講師・Foodbiz-net.com代表

外食・中食、よろしゅうおあがり

バングラデシュでも糖尿病予防のためのコメが開発されてる

道畑 美希

キーワード:

Dacca

ダッカのスラム街

Khulna

農村部は子供も多い。クルナにて

irrigation

地下水を汲み上げて灌漑も行われていた

lowGIrice

スーパーマーケットで売られていた低GI米

indiabasmati

インド産の糖尿病用米も売られていた

bangracurry

冷凍食品やカレーの素なども売られている。帰国後、作ってみた

 2月末から3月初めにバングラデシュに行ってきました。最貧国とも言われたバングラデシュですが、GDPはここ数年、5~6%の伸びを示し、また、BRICSに続くの新興国といわれるNEXT11にも名を連ねている国です。海外からの投資対象先、とりわけ生産拠点としてポスト中国との関心を集めており、ユニクロもバングラデシュに工場進出を決めています。折しも、ダッカに向かう飛行機では、JETRO(日本貿易振興機構)主催のツアーで視察に向かう日本人ビジネスマン約50名と乗り合わせました。

 バングラデシュは、都市国家以外では世界一の人口密度の国で、農村部へ行っても人がいっぱいいるという印象を受けます。とりわけ首都ダッカの車の混雑ぶりはすさまじいものです。約14万㎢という、日本の約5分の2ほどの面積に1億6千万の人が住んでいます。

 日本は山ばかりですが、バングラデシュは、国土の約1割が河川で、地図を見ると、国土のほとんどはデルタ地帯です。古来より洪水を繰り返し・・さぞや食うにも困る人々がたくさんいるのではと想像していました。FAO(世界食糧機関)のHunger Mapでは、バングラデシュは、赤く塗られ、つまり低栄養状態の人が20~34%がいるとされています。

 JICA(国際協力機構)の資料によると、農業技術の向上により2000年にはコメの自給が達成され、その後は、特に大きな災害がない限りは、ほぼ自給に近い状態が続いているとあります。とは言え、人口の40%が貧困層であることも事実です。

 決して食料が全国民には充足されてない状況のようですが、ダッカ市内のスーパーに行ってみると(この国でスーパーで買い物できる人はお金持ちに限られます)、お米のコーナーに、糖尿病予防のためのバングラデシュ産低GI(glycemic index)米が売られてるではないですか!

 そのバンフレットを見るとBRRI(バングラディシュ稲研究所)が開発したと書かれています。BRRIとは公的な機関ですが、貧困層がいる傍らで、公的な機関が、すでにこういう研究が進めていることに驚きました。買って帰り食べてみましたが、硬くて噛むのがしんどくなるくらいのごはんでした。普通の米の値段が1kg35円から70円くらいというのに、この低GI米は100円という高価なもの。その隣には、インド産の糖尿病用と書かれたお米もあり、このような機能性米に需要があることが見てとれます。

 滞在中に読んだバングラデシュの新聞Daily Star紙に、たまたま糖尿病のことが書かれていました。それによると、バングラメタボ研究所(みたいなところ)には、50万人の患者が登録されていて、その患者や新規患者も含め毎日4千人が研究所を訪れるそうです。ダッカ市内にはフィットネスクラブもあるし、豊かになって贅沢する人も増えている証拠です。

 ちなみに、バングラデシュの料理はカレーとご飯がメインですが、油と砂糖を多用します。お茶にも砂糖がたっぷり。糖尿病患者が増えているのは、遺伝的な要素もあるかもしれませんが、生活習慣によるところも大きいのではないかと思います。

 FAOのデータでは、バングラデシュの1人当たりの供給熱量は2200kcalとありますが、その分配はかなりの偏りがあるようです。経済は発展していくのでしょうが、1億6千万の人口を抱えて格差はますます広がっていくと感じました。
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道畑 美希

京都大学農学部修士課程修了後、外食企業を経てフードコーディネーターに。東洋大学講師・Foodbiz-net.com代表

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食のマーケティングやレストラン経営が専門。社会に出てから食を見続け、食べ続け、四半世紀。もはや語り部と化すおババのコラムです