食品安全委員会は、放射性物質の指標値に関する食品健康影響評価について、3月22日から計5回の会合を行い、最終日の3月29日、「放射性物質に関する緊急とりまとめ」として厚生労働省に答申した。
食品安全委員会は、同日の議事要旨の中で「主な概要」を下記のように記述している。
◆放射性ヨウ素について、年間50mSvとする甲状腺等価線量(実効線量として2mSvに相当)は、食品由来の放射線暴露を防ぐ上で相当な安全性を見込んだものと考えられた。
◆放射性セシウムについて、自然環境下においても10 mSv程度の暴露が認められている地域が存在すること、10~20 mSvまでなら特段の健康への影響は考えられないとの専門委員および専門参考人の意見があったこと等も踏まえると、ICRPの実効線量として年間10 mSvという値について、緊急時にこれに基づきリスク管理を行うことが不適切とまで言える根拠も見いだせていない。
◆放射性セシウムについて少なくとも実効線量として年間5mSvは、食品由来の放射線曝露を防ぐ上でかなり安全側に立ったものである、と考えられた。
◆放射性ヨウ素及び放射性セシウムに共通する事項について、今回は既に定められている暫定規制値の妥当性について検討したものではなく、今後、リスク管理側において、必要に応じた適切な検討がなされるべきである。
これでは、放射性セシウムの数値が5mSvなのか、10mSvなのか、判断つかない。そのため、報道陣からも「分かりにくい」という声が上がり急遽、委員会終了後に記者向けの説明会が、約1時間にわたって行われた。記者と、食品安全委員会側(事務局課長と専門委員二人)のやり取りをすべてお伝えする。
第375回食品安全委員会終了後の記者向け説明会詳報
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Q 暫定規制値を決める際のリスク管理側の業務、リスク評価側の業務の内容がわかりにくいので整理してほしい。
A リスク管理とリスク評価はリスク分析手法の中でその二つを分ける、われわれは科学的にリスクの評価をするもので、その検討結果に基づいて規制値を決めるのがリスク管理側の厚生労働省である。農薬などは毒性の評価がこちら側、基準値を決めるのがリスク管理側と役割分担がされており、今回に関しても同様である。
Q 今回、遺伝毒性発がん物質についてきちんと審議されていないのですが、実際にはこれだけ量が少ないのであれば遺伝毒性はないと考えていいか。
A まさにそこが非常に難しいところで、低い用量でどうなるかと言う情報は、本日の議論でも専門の先生方からいろいろご議論があって、修正もあったように、基本的に遺伝毒性発がんがあるだろうと考えられていて、本来は低い用量の評価をやらなくてはならないという課題はある。
Q 急性毒性の問題、このくらいの量は食べてもいいとよくいわれているが、本当にそうなのか。
A 急性というよりも、われわれが出した今回の値は実効線量としての放射性ヨウ素、セシウムの値であり、これはかなり安全側に立って安全という評価を出したもので、この数値は安全だと言うことを評価である。
Q 今回の結論の数字は、若干とびぬけても大丈夫だろうと考えていいんですか。
A 評価書と異なるいろいろな表現は、かえって混乱するので、評価書のとおりですとしかお答えしようがない。
Q セシウムの評価について、とりまとめの表現で認めているのは10を支持する数値か、5と10のもう少し細かい説明を。
A 緊急とりまとめの24ページ上に、ICRPの10mSvの数値について書いてあり、5行目から「入手出来た資料からその根拠について確認できていない」と書いてある、そのうえで続けてこういうご意見があると続き、「緊急時にこれに基づきリスク管理を行うことが不適切とまで言える根拠も見いだせていない」として最終的な結論として、少なくとも放射性セシウムに関し実効線量として年間5mSvは、食品由来の放射線曝露を防ぐうえでかなり安全側に立ったものであると考えられた」という結論である。それで何が結論かといわれれば、5mSvになる。ただ、この結論を出す過程でいろいろな検討があり、検討過程において見える形でとりまとめの中に示した。
Q 放射性セシウムの確認だが、多くの人口集団が10mSvで生活とあるが、これは食品由来の摂取量がこの地域で10mSvと言う認識か。いわゆる内部被ばくということか
A いえ、ここで言っているのは、その地域の放射能が高いということであって、この地域からとれた一定の食品が摂取されているということだ。
A たとえば中国南部地域では、大気の外部被ばくと同時にそこで生活して喫食した体内被曝をみて健康影響がないところの数字である。
Q じゃあ、これは住民の内部被ばくとしての、基準というととらえてよろしいですね。
A そうです。
Q 放射性セシウムの5、10の数値ところだが、厚生労働省で今回の緊急取りまとめを受けて基準値を改めてつくるわけだが、その場合に10mSvでさしつかえない、と言う理解はできるのかどうか。
A ひとえにこれは管理側のご判断でなります。評価と管理は分けられているので、管理側がどうするのを評価側から言うのは、差し控えるべきだと考える。われわれとして言えるのは、少なくても年間5mSvは、食品由来の放射性曝露を防ぐうえでかなり安全側に立ったということである。これが現実である。あとは10 mSvの基準値の検討過程においてこういうことがあったということも、これは厚生労働省に伝える。あとは管理がどういう判断をするかだ。必要があれば厚生労働省に説明をするが、まずは緊急とりまとめとしてまとめた、ということだ。
Q 先ほどの委員会でも質問があったように、菅谷、中川、滝澤先生も、この文章は10mSvもOKだという見解を示していたが、そのあたりのギャップについて滝澤先生にもお聞きしたい。
A この文章は何度かご確認頂いているので、ギャップがあるとは私は認識していない。
A 課長さんの仰るとおり。ちょうど24ページに書いてあるとおり、「緊急時にこれに基づきリスク管理を行うことが不適切とまで言える根拠も見いだせていない。これらのことから、少なくとも放射性セシウムに関し実効線量として年間5mSvは、食品由来の放射線曝露を防ぐうえでかなり安全側に立ったものであると考えられた」こういうことが、リスク評価として行ったという事実である。こういうことで、矛盾がありますでしょうか。
Q 今回、まさに緊急時だからこそこの取りまとめがあると思うのだが、10 mSvでも容認しているという理解でよいだろうか。
A この文章で「見いだせていない」ということでご理解頂きたい。
A 先ほどから申しているがわれわれは管理措置について云々言うことは避けている。あくまでリスク評価の結果としてこうだということ。それを現段階で取りまとめとしてお示ししている。今後、課題にもまとめているように、さらなる詳細なリスク評価をしなければならないが、現段階はここまでである。
Q 管理側の判断を聞いているのではなくて、取りまとめの見解を聞いている。「不適切でない」と書いてあるのは、容認していると理解していいか。
A 「不適切とまで言える根拠を見いだせていない」ということしか書いていない。容認と言うことばで置き換えるのは、ちょっといかがなものか。
Q 確認だが、セシウムの実効線量として年間5mSvの上に書いてある、24ページICRPpublication63の実効線量10mSvとあるのは、これはセシウムだけのものなのか、それともいろんな核種を含んでいるのか、要するにここの10と次の5 との関係がわからない。
A ICRPについて我々が理解しているのは、核種ごとついて言っているのではない。緊急時に介入するときの指標としてこの10 mSvが示されていて、それに核種がどうのこうの、と言うのはなかった。われわれが出している結果としては、少なくとも放射性セシウムに関しては、実効線量として年間5 mSvである。
Q 繰り返しになるが、ICRPの示す年間10 mSv、これについて、食品安全委員会はこの数字は有効とみていいか。
A 食品安全委員会の出している基本の数字は年間5 mSvで、これが基本の数字で、安全側に立ったというのがベースの判断である。検討の過程でICRPについて検討した結果、この24ページの結果になっている。結論はどちらかといえば、ベースは5 mSvである。
Q それはどちらかといえば、ということか。
A 結論は、ということであれば、5 mSvである。
Q 私たちが読んでどちらに取ればいいのかわからないというのは、管理側にとってもいかようにもとれてしまう気がするが。そういう取りまとめを評価側が作るということについてはいかがか。
A 緊急とりまとめとして、今、あるデータで評価できたことについて、緊急的に取りまとめたとしか、そういう言い方しかできない。あとはコミュニケーションの問題。さっき言ったように管理側にどうしろこうしろ、というのは言える立場ではないが、もし管理側がこれについて、疑問等あれば、審議の経緯を含めて説明していくことになる。コミュニケーションは評価と管理が分断されているわけではなくて、コミュニケーションも含めてリスク分析手法だと思う。また本件、政府全体、ばらばらではなくて、全体として動きの中で、我々も動いているという意識は当然ある。
Q 中川専門委員は、今日の議論の中でヨウ素の50 mSvについて、これより少し超えてもと理解しているという趣旨の発言をしている。小泉委員長も、それに対して、同意するようなことを仰っていたような記憶するが、ヨウ素についてもそういう部分もあると言う理解だろうか。
A ちょっと実際のやり取りがどこにあるのか、真意はどこか、誤解があっりするとまずいが、22Pにもおわかりのように、ヨウ素にしても「現時点の判断で、年間50 mSvとする甲状腺投下線量は食品由来の放射線曝露を防ぐうえで相当な安全性を見込んだものであると考えられた」としており、要は化学物質のリスク評価に詳しい人ならこれは分かりやすい表現なのだが、あまりこれを逆にいうとわかりにくくなるかもしれないが、化学物質の時でも安全係数や、そういう概念があるので、安全の方を見込んでリスク評価を行っている。今回の50 mSvというのは、相当な安全性を見込んだものだということで委員長もそういう発言をしたと思うのだが。
Q 今後、諮問を受ける内容について、継続して評価を行うと書いてあるが、「継続して行う食品の健康影響評価」のスケジュールとどういう体制でやるのか、教えてもらいたい。
A 正直言うと、本日まで非常に短い間にこれをやってきたので、今、具体的なスケジュールを細かくご説明できない、これから考える。課題が残っていることは確かで、今後の予定については出来るだけ早く、具体的どこまでやれるか、考えていきたい。
Q セシウムに関して5 mSvというのは、これはそもそも、何を根拠にしているのかわからないので教えてほしい。それから、参考配布資料の「放射能等の強さを示す単位」について、例2に実効線量係数が1.6×10-5とあるが、これは前の資料では2.2×10-5だったと思うが、この違いは?
A 放射性ヨウ素ですね、1.6というのは原子力安全委員会が示した指針であって、当初食2.2を用いて食品安全委員会では数字の説明をしていた記憶があるが、今回は緊急の未曾有の大事故、原発の事故ということで、原子力安全委員会では、今まで検討してきた指針を使ったらどうか、と言う申し出があって、このように外挿したと聞いているが、それでよろしいでしょうか。
A 1.6のほうは、原子力安全委員会で示されている指針で示されている数値を用いていて、ここは子供の数値についてもとっていると資料にも書いてある。そちらの方が細かい数値ということで用いている。
Q 5 mSvの数字の根拠については?
A ICRPが見直しを行ってバージョンアップしてきている、1977年時点の公衆の線量限度が5 mSv/year、1990年の勧告の後は1mSv/year、77年チェルノブイリの対応の時は5 mSv~50 mSvで対応しようということになり、90年の勧告以降は、1 mSvの10倍をもって10mSv/yearで対応可能となった。基本が5mSvだったのが、1 mSvになった、勧告があった後にいろんな報告がでるので、77年、90年、最近では2007年ということで、いずれは2007年について報告書がでてそれに対する対応が出てくるでしょう、と考えている。
Q 管理と評価ということばが先ほどから出ているが、8都県の知事が規制値の見直しを求める要望書を出しているが、今回、そちらの要望書について答えることができたか。現在の規制値について、セシウムについて10 mSvで規制値を作ることを妨げないかどうか、滝澤さんに聞きたい。
A 先生に聞かれる質問かと思うので、私の方でこたえたい。規制値は管理側のほうが担当しているので、我々のほうは科学的根拠からしか言えない。先生からお答え頂くのは難しいと思うが。
A 課長さんの言ったとおり。規制側は緊急はICRPは10 mSvいけるのではないか、と出しているが、管理側はどのような数字で食品の安全性を担保するか、こちらのほうに、検討して頂く、と言うことになろうかと思う。
Q ヨウ素のほうで、「相当の安全性を見込んだもの」と言う表現があって、セシウムのほうで「かなりの安全性にたったもの」と言う表現がある。この二つの表現の違いについて教えてほしい。
A これは議論したうえでこの形になっている。セシウムの方が、より安全側ということでいいかと思う。
Q 議論の中で、品目ごとの摂取量を試算していきたいという発言があったが、今回の課題の中にそういう文言は見当たらなかった。今後の議論として、品目ごとの扱いがどうなるのか、杉山さんがその趣旨の発言をされたので、ご意見も頂きたい。
A 今回の取りまとめ、5pには現在の暫定規制値を超える状況について書いてあるが、そこで曝露について触れており、25p課題のところでも曝露に関して、曝露状況等を把握しての評価としている。当然これは汚染、汚染ということばはよくないのかな、その作物中にある放射性物質の濃度と摂取量から試算ということになるので、そういう情報が評価には必要だと言う認識である。
A 課長からの話もあったが、先ほどから言っているが数値等決めるのはあくまで管理側である。摂取量を考慮するかどうか管理側の判断である。しかし、全く個人的な意見だが、委員会とは関係なく、現実的には野菜、全て同じものに、計算式を持ってくるのは不合理だと言う気がある。ただし繰り返すが、これは管理側の問題である。
Q 今は、2.2とか1.6の数字の話をしているのか?
A いえ、今の話は摂取量の話である。品目ごと、食品群にはいろいろあって、穀類、肉類などがあり、国民栄養調査に細かい平均値が出ている、たとえばホウレンソウについてはこれ、そういう値を適用した方が、より現実的な生活スタイルに合っているかと思うが、これは個人的な意見である。
Q 杉山さんに個人的な見解でいいが、1.6と2.2の数字だが、今後新しい係数として1.6が出てくるのか。今後は、品目についてこれを当てはめるべきか。今は2.2だけれども。
A(事務局)これは参考資料として使っているもので、とりまとめの5とか10とかは関係ない。要はベクレルとシーベルトをどう換算したらいいか、ということをわかりやすく資料を作るために作ったもので、最初な放射性障害防止法のものを使ったのだが、原子力安全委員会の提言もあり、こちらは子供の数値がある、ということでで、ちょっと違う数値を書いている。要は残留値を決めるときに、シーベルトからベクレルに変える時にああいう計算式が必要となる。それをどう使うかは管理側の判断である。われわれが示しているのは、ベクレルとシーベルトの関係を説明するために数値を使っているだけである。暫定規制値でどういう数値を使うかは、管理側の話である。
A 一点追加すると、ベクレルという単位が出ている、シーベルトと言う単位がある、検討をしている時もわれわれの方としても評価における単位をどうするのか、専門の先生方にご意見を聞いて、評価ということであればシーベルトだろうということで議論すべきだろうということで、評価の単位はシーベルトでやっている。
Q 今回とりまとめた内容をいつどういう形で厚生労働省に報告するのか
A 今日中に届ける準備をしている。
Q さっきの5 mSvのセシウムの話だが、1977年の勧告で5 mSv、2007年は10mSvということか。
A 1977年が5 mSvで、90年1mSvです。
Q それをどうしてセシウムに5mSvにもってきたかがわからない
A 今回の場合はいろいろな検討の過程がある。現実に先生がさっき言われたとおり、10がどうだ、5がどうだ、データがどれだけあるかをみている。10~20は安全だと言う議論もあり、ただ、ここにも書いてあるが異論があるデータもあり、いろいろな議論も起こり、実効線量として最終的に年間5 mSvと言う議論となったことを示している。それが一番正確な説明である。なぜ、1 mSvが5 mSvになったのか、ということが疑問ではないか?
Q いや、もともとは10 mSvで議論があって、セシウムは5 mSvになっている。
A それはICRPの話ではないですね。
Q 今回の報告で5 mSvが結論が出てきたが、この文脈を読むとその前は、年間10 mSvという値について、云々ということが書いてあって、その後にこれらのことから、少なくとも放射線セシウムとして年間5 mSvと言っている、この5 mSvはいったいどこから出てきた数字と聞いている。
A 現在、実際、原子力安全委員会の指標でも5 mSvを使っている。背景として事実関係がある。議論が10 mSvか、5 mSvかという言い方が私自身は理解できず、別に10 mSvで議論は進んでいなくて、いろんなデータを見て、最終的に5 mSvとして議論がまとまったものである。ちょっと10 mSvで議論が進んでいたという理解はいかがなものか、首をかしげるのだが。
Q いやいや、この書きぶりがICRPpublication63で示されている実効線量として年間10 mSvという数字できている。
A それについては、その下で書いてあるように、これは一定の根拠を有している…思われたが、実際には根拠は今回、確認できていないということである。10 mSvが安全だということはきちんと確認できていなかった。そうなると次の議論として、こういう議論をして5 mSvは、今使われている数字としなった。議論によっては他の数字になったかもしれないが、議論としてそういう整理ができた。
Q そうすると、少なくとも放射線セシウムに関し、実効線量として、現在使われている年間5 mSv、ということか
A いや、現在使われているという数字というが、それはいろんなデータをみたうえでのone of themで、現在使われているからこういう風にしたということにはならない。
A 5 mSvだが、まず公衆の線量限度が1 mSv/yearだが、これとは別に線量が制御されない状況というのが、いわゆる今回の事故とか、こういう場合は1 mSv/yearを必ずしも適用するわけではない、とICRPで決めている。その中で最大でも10mSvまでは、介入できるだろうという判断で、何も10 mSvという事実ではない。先ほどから課長が言っている議論であり、10でなくても5で安全だろう、より安全に持っていけるだろう。10と言う数字だけに限定されているわけではなくて、最大10ということだから、この中でいろんな議論の中で、5と言う数字になったと理解している。
Q 最終ではそう言っているが、途中段階でWHOの88年の5 mSvという数字を出していて、ICRPは10 mSvを出していて、5を否定しないという発言もあったが、そういう理解でいいのか。
A このへんは19p、20pに出しているが、ICRPの線量限度、WHOは下限の線量、そういうところで踏まえて議論している。5と言う値は、いろいろなところで出てきた値と言う認識である。現在使っている値であることは、認識の一つであるが、その数字が同じであると言われればそのとおりだが、検討してきたいろいろな数字の中でその過程の中で出てきた数字である。
Q 杉山先生の話で質問だが、一般公衆の被ばく限度が5 mSvから1 mSvになったというのは、これは食品からの被爆ではなくて、別の話ではないかと思ったのだが。
A 誤解があったかもしれませんが、トータルとしての線量限度である。
Q 食品からではないと。
A 食品だけではない。
Q では、今議論にあった5 mSvというのは、食品からの介入レベルの話だと思うが、そういう理解でいいか。
A 先ほどから言っているように、線源が制御されていない状態の話なので、公衆の今の5mSvではなくて、食品に対して10 mSvなり5 mSvを適用するということでよろしいか。
A もっと正確にいうと、今回、われわれは介入レベルを示していない。食品健康影響評価としての取りまとめだから、まさにここである意味、年間5 mSvというのは、食品由来の放射線曝露を防ぐのにかなり安全側に立ったというまでの情報であり、介入レベルを決めたというと違うと思う。
Q それでは健康に影響がある値として、5 mSvとして確実に安全であるということか。
A 安全側に立った値ということである。
Q 介入レベルを言っているわけではない、ということか。
A 農薬なんかでもADIを決めてそれから残留基準値を決めるが、そのADIは一日これだけ食べても大丈夫で、かつこれは安全を見越しているので、ADIを少し超えたからといって何か出るようなもので決めているわけではない。これと同じように文章で書いてあるように、セシウムはかなり安全側に立っているということでまとめた。
Q ただし、もとになっているICRPは介入レベルで10だとか5だとか、言っていると思うのだが。
A ですからわれわれは24ページで言っているように、その根拠が知りたくて、いろいろ調べたところそれが得られていないもあり、10ということで得られていないということを踏まえて、流れを読んで頂ければわかる。それで判断をしている。
Q 今回は介入レベルではなく、健康への影響ということか。
A そうです、あくまでわれわれがやるのは、食品健康影響評価の一環としての緊急とりまとめを行ったことである。
Q 確認したいのだが、10 mSvは核種に関係なく食品から摂取する全ての放射線の量であり、5 mSvはその中のセシウムにいうことに限定したということか、昨日の議論の最後に、ヨウ素は2mSvになるので、これを足すのか引くのか、みたいな話があったと思うが、全体が10で、その分セシウムが5と言う理解では違うのか。
A 全体については、今回は書いていない。議論として、いろんな議論があり、今後も議論があるが、今回はヨウ素、セシウムについてそれぞれとりまとめた、食品全体についての話にはなっていない。
Q でも10 mSvというのは、セシウムだけではないのですよね。
A それはICRPが言っているだけで、われわれではICRPは一種の介入としての管理値で出されており、それはリスク管理的なところがあるわけで、その科学的根拠のほうがわれわれの担当であるので、それをダイレクトに比較されても、ちょっと違うところが出てくる。10の中の割り振りで、5と2としたわけではない。あくまでヨウ素のほうはWHOの情報もあり安全性の観点でこうであるということ、セシウムのほうはかなり安全になったということで示している、10の割り振りとかそういうことではない。
Q どうしてもわからない。セシウムを5とした科学的根拠となる数値が、これを読んでも、今の話でもわからない。何を根拠により安全側に立ったより妥当なものということを言っているのか。数字を示して話してほしい。
A 数字というと、まさにさっきから言っているように検討の結果として、国際機関の評価に、評価に使えるデータが少ない状況のもとで、安全側のご意見もあれば、少ないところで放射線の影響が出ているという情報もあり、その中でどれだけ安全側に立ったかという数値を示せるかという検討をした結果、こういう数値になったということである。それ以上の説明もそれ以下の説明もできない。まさに評価の取りまとめで書いた範囲でしか、われわれは説明できない。
Q そしたら何で6ではだめなのか、何で7ではだめなのかわからない。
Q 5の意味がわからない、
A (少し間をおいて)そういう意味においては、今まででもこういう値を出すときは、ある程度割り切った値を出す、というのはよくやられている話だと思うのですが
(一斉にどよめき)
Q 10だから半分の5でいいだろうと、そういうことか(笑い)。
A いや、半分の5というよりは、かつてICRPの5~50と言う数値もある、いろいろな値からとっているわけで、半分だから5ということではない、だから先ほど仰ったとおり、10で議論をされているというのはあるが、10というのはICRPの根拠の問題があり、人の自然環境でも10 mSv程度の曝露の状況もあり、そういう状況を勘案して、最終的に落ち着いたのが5だろうということで、出てきた。
Q でも5~50というのは、これはセシウムだけを言った線量ではない
A 仰る通りである。
Q それならなぜ、ここに放射線セシウムに関し、年間5 mSvと言う数値が突然出てくるのか。
A でも逆にいえば、セシウムでも含まれている5~50ですよね、10だってセシウムの話でもあるので、核種の話でごちゃになられている気もするが、セシウムに関してはヨウ素とは異なり、いろんなところに分布するので、一般的な放射線としての議論としてどうだと、今日もその議論を整理している。一般的な放射線の議論として、セシウムについてどうだと言う議論をしているので、別にそこはおかしくないと思うが。滝澤先生いかがか。
A 課長さんのおっしゃるとおり。
Q この5とか50、等価線量の50は、介入レベルを示すものではないと仰られたが、そうするとこれはこれを超えたら健康に影響がある値、というふうに誤解され得ない危険がある、予防原則的にこの値、介入レベルだということで各国際機関の文章も取りまとめの中にも入っており、その部分しか資料が得られなかった、ということでひいて、この文章をまとめておられる。最後の最後に、それでいてこの5 mSvは介入レベルを考えるものではないと言ってしまうのは、論理矛盾だと思うのだが。
A 介入レベルを考えるとしたら、それは管理側になるので、われわれは安全性についてみて、十分な安全なレベルを示している。ちょっと誤解があるのかもしれない。ここに書いてある数字は、あくまでヨウ素についてはWHOの情報も含めて検討して、安全であれば安全性は相当見込まれる、セシウムについてはこれはかなり安全側に立ったということまで言えるとしている。
Q 安全と言ったときに、それは健康に、人体に影響のある安全なのか、社会として安全なのか、何について安全か。
A 食品健康影響評価をやっているので、人の健康に関してみている。
Q そうするとセシウムの場合は、5 mSvは安全と言えるが、それより上は確たることは言えない、という意味になるか
A 正確に言うと、5 mSvがかなり安全側に立ったものだということになるので、言った言葉を言い換えられて、それでいいですか、いいですかという質問は答えにくいのだが、さっきから言ったように安全を相当見込んだ数字であることは間違いないといえる。
Q そこは確認できたということですね
A それ以外のことばで言われると、我々は、あれだけ先生に議論してまとめた文章なので、その表現に戻らざるを得ないということはご理解頂きたい。
Q 仮定の話になるが、暫定規制値に使っているセシウムの値が仮に、諮問された時に既に10 mSvだったとしたら、これまでの論理であれば10 mSvでもOKということになると思うが。
A それはデータによるので、仮定の話には答えられない。
Q データの話というのはどういう意味か
A われわれは少なくとも海外も含めた安全性のデータを、この短期間で集められるだけ集めて、専門の先生にも相談して知見をもらったうえでこの整理である。先ほど言われた場合でもプロセスは変わらず、それでどうなるかということ。その値が20になるのか5になるのかは、やってみなければわからない。そういう質問には無理がある。
Q 仮定の話になるが、暫定規制値に使っているセシウムの値が仮に、諮問された時に既に10 mSvだったとしたら、これまでの論理であれば10 mSvでもOKということになると思うが。
A それはデータによるので、仮定の話には答えられない。
Q データの話というのはどういう意味か
A 我々は少なくとも海外も含めた安全性のデータを、この短期間で集められるだけ集めて、専門の先生にも相談して知見をもらったうえでこの整理である。先ほど言われた場合でもプロセスは変わらず、それでどうなるかということ。その値が20になるのか5になるのかは、やってみなければわからない。そういう質問には無理がある。