GMOワールド
こちらの記事は以前に、日経BP社のFoodScienceに掲載されていた記事になります。
こちらの記事は以前に、日経BP社のFoodScienceに掲載されていた記事になります。
中国政府のGMOに対する基本姿勢は「研究開発は熱烈推進するが、商業化には慎重姿勢堅持」である。そして、今のところこれは本当のことらしい。しかし、商業化なしに研究開発だけを行う訳がない。イネを中心に機は熟しつつあると思わせる報道が最近続いた。
9月29日付「中国日報」は、中国国家農業GM作物バイオセーフティー委員会(6月22日、5年間の任期を終え委員数が50名から74名に改組された)が11月に会合し、4種類のGMイネ商業化を決める可能性が高いと報じた。害虫抵抗性3品種と白葉枯病抵抗性1品種であり、これらの試験栽培の成功は度々報道されてきたし、いつ商業化に踏み切るかも注目を集めてきた。
参照記事1
TITLE: Genetically modified rice set for go-ahead
SOURCE: China Daily
DATE: Sep. 29, 2005
しかし、同日のReutersは、直ちにこの報道内容を推測として否定した。中国科学アカデミーの科学者が、個人的にそれはありそうにないとコメントしたというのだ。
参照記事2
TITLE: China GMO rice unlikely this year-scientists
SOURCE: Reuters
DATE: Sep. 29, 2005
4月および6月には、Greenpeaceが中国南部において、既にGMイネが広く違法商業栽培されていると告発したが、中国政府はこの件に関しノーコメントである。これが公式な商業化認可に対してどう働くのかは未知数だが、結果は11月を待つしかないだろう。
中国は、昨04年には370万ヘクタールのGMワタを栽培し、これは世界第5位の栽培面積(ISAAA)に相当する。先鞭をつけたのはMonsanto社のBtワタであるが、その後同社の協力を得て、97年には自前で開発したBtワタの初の商業化に成功した。そしてこの度、新しく開発されたBtワタの商業栽培を認可したニュースも9月19日付「中国日報」が伝えている。
参照記事3
TITLE: New cotton strain to raise output by 25%
SOURCE: China Daily, by Zhao Huanxin
DATE: Sep. 19, 2005
中国農業科学アカデミーにより99年から開発が進められてきたこのGMワタは、Yinmian 2と命名され、90%以上の害虫(オオタバコガ=bollworms)抵抗性を持ち、同時に反収を25%上げるハイブリッド種だという。米国やインドもこの開発にはまだ成功していない優れたものらしい。
一方、9月13日には、バイオ科学上海アカデミー植物分子研究所の科学者がイネの耐塩性遺伝子のクローニングに成功したとの報も伝えられた。上海地域の塩に抵抗性の強い古代の土着イネの品種から、SKC 1遺伝子のクローン作成に成功したという。
参照記事4
TITLE: Salt-resistant gene of rice cloned
SOURCE: Xinhua News
DATE: Sep. 13, 2005
このSKC 1遺伝子はイネの地上部分のナトリウムとカリウムをコントロールし、ヒドロニウムが茎や葉に過剰に蓄積することを防ぐ。この遺伝子導入は、コメの産出量を上げ安定させることが可能になるという。中国には世界の1/10に当たる1億ヘクタールのアルカリ性の土地がある。また、耕地のうち800万ヘクタールも塩類集積に苦しみ、過剰な施肥や干魃による砂漠化が進んでいる。
GMのみならず、中国のバイオ工学への傾斜は80年代からかなり目立つ。過去5年の開発投資額は15億米ドルで、さらに増額されるという。設備的には、大都市を中心に900の近代的なバイオ工学企業と20以上のバイオ工学パークを持つ。
参照記事5
TITLE: China to Speed up Biotechnology Development
SOURCE: CRI News, by Zheng Chenguang
DATE: Sep. 15, 2005
科学技術大臣は「次の15年で、中国のバイオ工学は食品保全、人口と健康、環境改善及びエネルギー保全を目指す。それによりボトルネックとなっている経済と社会の開発問題が解決される」と述べている。「巨人の爆走」はいつ始まるのか。(GMOウオッチャー 宗谷 敏)