GMOワールド
こちらの記事は以前に、日経BP社のFoodScienceに掲載されていた記事になります。
こちらの記事は以前に、日経BP社のFoodScienceに掲載されていた記事になります。
GMOにかかわるロシアのニュースは、他国に比べると極端に少ない。では、何もしていないのかというと、実はそうでもないらしい。珍しくロシアに関する記事が目に触れたので、その辺りを少し整理してみたい。
ロシアでは現在GM食品の開発と生産は禁じられているが、輸入と販売は条件付きで許可されている。輸入規制はロシア保健省が管轄しており、99年 7 月1日から義務的な登録許可制になっている。
参照記事
TITLE:GM food battle moves to Russia
SOURCE:The Hindu, by Vladimir Radyuhin
DATE: Sept. 17, 2003
99年時点で、ダイズ、トウモロコシ3品種、ジャガイモ、サトウダイコンなどの8農作物及びそれらの製品81種類が登録証明を受けた。下記の記事は、輸入承認時の検査方法の進歩と、それに伴う認可製品の追加更新にかかわるもの。
参照記事
TITLE:Russia introduces special test for imported GM food
SOURCE:BBC Monitoring Former Soviet Union
DATE: Sept. 19, 2003
GM食品販売に当たっては、同じく保健省が所管する表示制度の規制を受ける。こちらは00年7月1日より施行され、02年9月1日からは義務化された。製品の原料構成比5%以上の場合に義務表示、ただし、ダイズ油のような組み換えたDNAやタンパク質を含まない製品には表示義務はない。これらは、日本のGM食品表示制度に近い。
ロシア国内における試験栽培は、モンサント社による害虫抵抗性ジャガイモが既にアプリケーションを得ている(March 2001, The Ecologist)。ロシアにおけるコロラド羽虫の被害は大きく、もしこのBtジャガイモが導入されれば効果絶大なのだが、大部分のロシアの農家は旧来の自然な農法にこだわり、殺虫剤すら使うことに抵抗を示す。
今回引用した記事の書きぶりからは、ロシアではあたかも科学者全体がGM技術に対しネガティブなような印象を受けるが、積極的にGM研究、導入を行うべきだという意見の科学者も少なくはない(03.05.14, Rosbalt News, 03.06.17, Pravda)。
20世紀前半の旧ソ連の時代、遺伝学を巡って、獲得形質の遺伝理論を信奉したルイセンコが政治的権力と結びつき、自然選択・適者生存論の科学者たちは、弾劾・追放の憂き目にあった。この失われた40年は、その後50年にわたる遺伝学の遅れをソ連にもたらしたと言われる。透明性を確保した上で、科学者同士の論争は大いにして欲しい。
またロシアを国際的な穀物需給の面から考えると、90年代後半の全体的な経済破綻による恒常的減産からは漸く回復基調にあるものの、天候要因などで生産量が安定しなかったり、品質面で問題があったり、常に不確定要素を構成する国である。こうした面から見ると、GM作物導入は、中国と共にロシアにとっても必然的な帰結のような気もしてくる。(GMOウオッチャー 宗谷 敏)